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インターネットと人権と私

デザインとエンジニアリングが不可分であることを表したベン図

から SmartHR にハードコア IA (インフォメーションアーキテクト) として入社しました。 所属はプロダクトデザイングループ (以下プロデザ) で 4 人目です。

パーカーのフードを被りバリアントールをかけ、イヤホンをしている男性。NHK から国民を守る党の政見放送を真似た背景に「日本の人事部代表 人権を守るプロデザ」と書かれている。

ここ数年は uknmr という ID で活動していたんですが、「うこん丸」「うくんまー」「う○この森」などひどい言われようだったので社内では u と呼んでもらうことにしました。

前職は同じビルで同じ階にある mediba という会社で、おそらく六本木一丁目界隈では初のフロア内転職です。

インターネットと私

ダイヤルアップ接続でインターネットに飛び出し、WEB デザイナーとして荒稼ぎする学生生活を送るも、Java エンジニアとして 8 年、フロントエンドエンジニアとして 3 年をごく平凡なサラリーマンとして過ごしました。

私とウェブの関わりを変えたといっても過言ではない ZeldmanDesigning with Web Standards には 18 歳の時に出会いましたが、力も勇気もなく指を咥えながらインターネットを漂う 15 年間でした。

この 15 年間は本当にインターネットに潜っていたとも言え、あらゆる著名なエンジニアやデザイナーたちを見張ってきたとも言えます。

そんな私のインターネットはに行われた kotarok 会OnScreen Typography Day のおかげでにわかに動き出すことになりました。

ティム・バーナーズ=リーが抱いたセマンティックウェブへの “幻想” はまだ私の中に生きています。

インターネットと人権

に行われた Japan Accessibility Conference には UD トークスタッフとして参加し、予期せず「人権の話」と出会うことになりました。

これまでもインターネットには壁や障害の存在が薄いことをなんとなく認識していましたが、この会を機に「誰であれ、どんな状態であれ、みな等しく差別されない」という基本的人権を強く意識するようになりました。またその延長として「ウェブアクセシビリティへの取り組みも人権問題だ」という考えを持つようにもなりました。

SmartHR と私

SmartHR という会社は社名変更をした直後くらいから認識しており、事あるごとに「いい会社だなぁ、でも HR なぁ(まったく興味ない)」という感じで、焼き肉を食べる会入社歓迎会の練習をする会も入力してはそっ閉じを繰り返していました。

そして 2019 年の年末に PHP カンファレンスで人権の話をした天重さんによる “「MVCとはなにか」あとがき” が公開されました。

“ぼくたちはソフトウェアを作っています。ソフトウェアは人間の業務の形を変え、ある業務は廃棄され、また新しく生まれる業務もあります。人間の仕事は、ソフトウェアの台頭してきたここ10年で大きく形を変えてきたと思います。ソフトウェアとは人間の業務を作り出している当のものなのです。プログラマーは、人間の仕事を左右することができる権力を持った存在です。そういうぼくたちが、人間の権利について、仕事の楽しさについて考えないのは、そもそも片手落ちなのではないでしょうか。”

この一節が求めていた最後の部品として私を導きました。

toB にも HR にも全く興味がなかった私でも、toB のその先にも従業員としてのユーザーがいて、その従業員一人ひとりが社会に貢献していることや、その従業員を SmartHR というインターネット文化の強い会社がインターネット上に展開したサービスで支えていこうとしていることと、この「人間の権利や仕事の楽しさ」とを結びつけるまでに時間はかかりませんでした。

極点に言えば SmartHR のユーザーは「働くすべての人」であり、“誰でも、どんな状態でも、みな等しく利用できる” 必要があり、これはとても「インターネット」であり「人権」でした。

「インターネットと人権と私」と SmartHR は綺麗に繋がりました。

デザインとエンジニアリングは不可分である

エンジニアとして常々、デザインとエンジニアリングは不可分であり、分けて考えたり、どちらかを優遇していてはいいモノが作れない、と考えてきました。

現実的には、デザインを理解するエンジニアもエンジニアリングを理解するデザイナーも、それらが不可分であると心の底から理解している上級職も少なく、場合に依っては「プロダクトへの愛が重たい」と煙たがれてしまいます。

そんな中、エンジニアとして職業人生の大半を過ごしてきた私を「デザイナー」として受け入れてくれたのが SmartHR のプロデザでした。

フロントエンドエンジニアが開発組織のコミュニケーションハブだとするならば、プロダクトデデザイナーはプロダクトを中心に置いた会社のコミュニケーションハブになり得る気がしています。

プロデザは「プロダクトデザイナー」の概念を変えていく

既に SmartHR には、PdM もプロデザも開発も各々違う角度からモデリングし合う珍しい環境があります。

PdM も開発も優秀で、正直プロデザがいなくてもこの会社はそれなりの成長をしていくと思います。

しかし、プロダクトの完成度は 25–30 点で伸びしろしかありません。

プロデザとしては Domain Object Model もやっていくし Document Object Model もやっていく。品質と生産性にコミットし続けることでプロダクトへ価値を提供し、願わくばユーザーに価値を届け、会社や社会にとって価値ある「プロデザ」をつくっていきたいと考えています。

SmartHR について

SmartHR という会社は本当に公開している情報どおりの会社です。これは驚くことで、外から見ていたときは「いやいや綺麗なとこだけ見せているんでしょう?」と半信半疑でした。

必要な情報はすべてオープンになっているし、みな優秀がゆえ権限の委譲コストが低く、最高のプロダクトをつくるための支援はいとわない。

同期が 16 人と大盛りで多様な職種な方が集まったオリエンテーションの中で、COO の倉橋さんがプロダクトの大切さとアジャイル開発への理解を説いてくれたのは印象的でした。

そう、もうここには言い訳のできる環境はなく、やっていくしかない。

また情報がオープンであるだけでなく年齢や性別を意識せず対等に対話できる環境があり、総じてインターネットであるとも言えます。 隙きあらば一発笑かそうとしている面々も多いですが、文章力が高く大人なコミュニケーションが繰り広げられています。

私自身ほんとうに言葉通り包み隠さず、何かベールをまとう必要もなく素直なコミュニケーションが取れるため「あぁ、私は 30 年あまりコミュニケーションに苦労してきたんだなぁ」と思うほどです。

これらの組織文化は一朝一夕で築き上げられるものではないし、真似できるものでもない。とはいえ崩れるときは一瞬な可能性も無きにしもあらずで、後発参入組としては比類ない組織を支えていく文化の醸成に貢献していきたい所存です。